本試験(3)

去年に引き続き、平成24年度の中小企業診断士2次筆記試験を受験してきた。万全のコンディションとは程遠かったものの、なんとか受験し切った。で、感想をメモし、再現答案を作成しておく。
過去問をよく分析していたので、試験は全て想定の範囲内だった。とはいうものの、再現答案のダサいところを見ると、本試験会場の緊張感の中、80分という時間制限は、やはりけっこうなモノだったのだろう。

事例I 組織(人事を含む)

問題は、http://www.aas-clover.com/download/aas/aas_m2401.pdf などからダウンロードできる。
これぞ岩崎尚人先生、という出題。時世をとらえつつ、いつもの基本的な論点からの出題。

第1問

人口動態や景気の変動による国内需要の低迷、新興国をはじめとした海外需要の向上。
アジア圏の経済発展に伴い、安価かつ一定の品質の労働力が得られるようになったこと。

第2問

X社は、戦略的にT国に進出するなど、海外進出・展開のノウハウや、海外市場の確保を行っていた。一方、Y社は、後発で、必要に迫られての海外進出であったため、A社にとって、事業失敗のリスクが大きかったからである。

第3問

S国の労働者のまじめさや勤勉さが、マニュアル通りの画一的な対応や、現状維持志向の組織風土を生みだした。このため、品質保証の体制の整備には必要不可欠な、現場主導のプロセス改善や、品質に対する意識改革が進みにくかったからである。

第4問

期待する役割:従業員とコミュニケーションを図り、従業員の能力、目標、モチベーションなどを把握し、管理する役割。向上させる能力:従業員の能力や成果などを把握し、その能力を引き出すような人材配置を行う力。

第5問

①部課長に、成果に応じた責任および権限を委譲すること、②目標達成の難易度や、その評価について、部課長間で十分な意見交換を行い公平で納得感のある目標設定、評価にすること、③部課長に、制度導入の意義を十分に説明すること、に留意すべきである。

事例II マーケティング・流通

問題は、http://www.aas-clover.com/download/aas/aas_m2402.pdf などからダウンロードできる。
平成23年度の出題によく似ている(きっと同じ出題者だ)。オリジナルの岩崎邦彦先生の出題とは、(根底はいっしょなのかもしれないが)ちょっと傾向が違う。個人的には、出題のレベルは落ちたのではないかと思う。
“コーズリレーテッド・マーケティング”については、全くわからず、大はずししてしまった。。これはやばい。

第1問

①X市内の消費者に対しては、消費者の嗜好に合わせて製品を柔軟に変化させる戦略。②県内の消費者に対しては、ロックでの飲み方に最適化した製品戦略。③全国の消費者に対しては、飲みやすさを重視した製品戦略。

第2問

(設問1)
酒販店Z社は、顧客ニーズにあったプライベートブランドを開発できたことで、競合他社との差別化が図れたと考えられる。これにより、Z社の露出が増え、Z社の知名度を高めつつ、売上の拡大が図れたと考えられる。

(設問2)
大手酒造メーカーY社は、高品質な芋焼酎を開発できたことで、自社の製品ラインナップの充実が図れたと考えられる。これにより、大手メーカーとしてのブランドを確保しつつ、売上の拡大が図れたと考えられる。

第3問

(設問1)
伝統的な製法などのこだわりを守りつつ、顧客ニーズにあった製品開発を行ってきた。さらに、このこだわりを、製品ラベルや店頭などで全面に出し、積極的に情報発信してきた。

(設問2)
こだわりと、その発信が、希少性の訴求や個性の発信に繋がり、口コミが喚起された。この口コミが、本格焼酎を求める消費者に広がり、消費者の支持を得て、売上が拡大した。

第4問

商店街のイベントなどの、スポンサーになることを提案する。これにより、イベントを通じ、B社と市民の良い接触機会が増加することで、市民のストアロイヤルティが向上する。

商店街の復興支援活動を、販売先、支援先の店頭やホームページなどでPRすることを提案する。これにより、B社の企業イメージが向上し、市民のストアロイヤルティが向上する。

事例III 生産・技術

問題は、http://www.aas-clover.com/download/aas/aas_m2403.pdf などからダウンロードできる。
本田先生らしく、生産現場からの出題。図表3点には驚いたが、平成21年度の問題とかぶるような箇所もあり、落ち着きを取り戻した。

第1問

生産面:加工工程の見直し、加工技術の向上などにより、生産性を向上させてきたこと。営業面:X社に依存せず、X社以外の食品スーパーへ積極的に営業展開してきたこと。また、販売品目を絞り、効率を高めてきたこと。

第2問

課題は、多品種少量生産における過大な在庫および欠品である。これは、ロットサイズが生産の都合で決定されているからである。改善策は、洗浄、消毒の作業を標準化し、作業者の訓練を行うことで、段取り時間を短縮することである。その上で、製品ごとに必要量のみ生産する計画を策定することである。

第3問

(設問1)
①見込生産に加え、受注生産を行う体制(進捗管理などを行う体制)を整備する、②現状では、食肉購入時のロット番号ごとに生産ラインに流せるが、個体管理のため、個体ごとに生産ラインに流す、③日々、顧客に直接配送できる体制を整備する、必要がある。

(設問2)
製品ごとの納期情報と進捗情報である。見込生産の場合とは異なり、発注情報を元に(配送時間を考慮し)、生産完了の時間を逆算し、生産計画を立案する必要がある。生産現場では、進捗管理、納期管理が必要となる。

第4問

多品種少量生産の体制の見直しを提案する。現状では、製品の企画を、機能別の分業体制で実施している。これを、顧客別の分業体制とし、製営一体となって企画を行うようにする。これにより、企画における調整コストが削減できるだけでなく、生産を考慮した企画が行えることから、生産コストも削減できる。

事例IV 財務・会計

問題は、http://www.aas-clover.com/download/aas/aas_m2404.pdf などからダウンロードできる。
がらりと出題傾向が変わったので、さすがにびっくりした。こっち方向に難易度を上げてくるのね。とはいっても、財務は、万全の体制だった(答練の成績優秀者の常連だった、エッヘン)ので、なんとかなったのではと思う(なんとかなっているといいなぁ)。
絶対に落としてはいけない、第2問の設問1のケアレスミス(188,450を118,450と写し間違い)とか、やっぱりくやしい。

第1問

(設問1)

  (a) (b)
売上高 391,000 414,000
売上原価 95,200 100,800
売上総利益 295,800 313,200
販売費・一般管理費 277,070 279,730
営業利益(損失) 18,730 33,470
営業外費用 24,360 24,360
経常利益(損失) △5,630 9,110

(設問2)

  (a) (b)
売上高経常利益率 2.20%
固定資産回転率 0.69回
負債比率 517.38%

(設問3)
1年目のCF=18,730×0.6+18,000=29,238千円
2〜10年目のCF=33,470×0.6+18,000=38,082千円
NPV=29,238×0.943+38,082×6.802×0.943−180,000≒91,840.27 > 0
よって、投資を実行すべきである。

第2問

(設問1)
変動費率=0.413、固定費=188,450千円
損益分岐点比率=118,450/(1−0.413)÷300,000×100≒67.26%

(設問2)
300,000×0.9=固定費/(1−0.413)
固定費=158,490千円
よって、29,960千円削減すればよい。

第3問

(設問1)
毎年のCF=(△13,490+16,000)×0.6+25,400=26,906千円
WACC=458,300/572,875×0.6×4%+114,575/572,875×5%=2.92%
企業価値=26,906/0.0292≒921,438千円

(設問2)
①承継先として、旅館を経営する企業(同業他社)が考えられる。留意点は、オーナー夫妻の経営方針と、承継先の経営方針が合致しているかどうかについて、事前に十分な意見交換を行うことである。②承継先として、ファンドなどが考えられる。留意点は、上記に加え、売却金額が妥当であるかどうかについて、事前に十分に検討することである。