多種多様な講座たち 〜 法律系資格試験対策

諸々事情があって(講師としての勉強も兼ねて)法律系資格の対策講座を、色々受講してみた。まだ、受講しきれていない科目もあるのだが、しばらく法律の勉強ができなさそうなので、早くも、感想をまとめておく。あくまでも、現時点の、個人的な感想に過ぎない。講義スタイルについても書いているが、それも、自分*1の目線で、そう見えただけ。上から目線っぽい箇所があるが、そうではない。いや、上から目線なのかもしれない。。
なお、掲載の順番は、予備校名のアルファベット順、五十音順であって、おすすめ*2順などではない。

司法試験*3対策

BEXA: 久保田 康介 先生「基本講義民事訴訟法」

価格は低い。リークエを使って、重要な箇所にマークをしながら、たんたんと講義が進む。わかりやすく、復習もしやすい。テキストが基本書であるというだけで、オンリーワンだと思う。
ただ、個人的には、相性がよくない。こればっかりは、仕方がない。
久保田先生に興味がある方は、先生のブログ「おーらせらぴー」を読むとよいと思う。

LEC: 柴田 孝之 先生「入門講座(民法)」

価格は普通かな。テキストは、試験に必要な箇所に絞った「オリジナルレジュメ」を使う(7 Summit は、一切使わない)。講義は、たんたんと進む(やや雑談が多い)。特徴的なのは、1 科目につき、2 回転するところ。まず、基本的な箇所を講義し、一通り終える。そして、また先頭から、今度は論点を中心に講義をする。確かに、わかりやすい。レジュメには、ポイントしか書いていないので、講義では、メモをとるのが必須*4。ちなみに、レジュメにメモを(大量に)とると、非常に見にくくなるので要注意(やってしまった)。
柴田先生のクラスがオンリーワンなのは、先生が書かれた書籍がたくさんあることだと思う。それらの書籍は、講義との相性がよい。なので、学習のツールがとても多く、勉強の仕方を工夫しやすい。
とは言いつつ、個人的には、ちょっと受け付けないっぽい。
柴田先生に興味がある方は、LEC のサイトだけでなく、先生のサイト「柴田の政務・法務ページ」も参考になると思う。

TAC W セミナー: 中村 充 先生「4A基礎講座(憲法, 民法)」

価格は低い。「4A 論文解法パターン講義(以下、論パタ)」からスタートで、いきなり論文を作成する。講師が発問しながら、少しずつ形にしていく、他の講義とは全くことなるスタイル。その過程で、問題のとらえ方、条文の使い方、文章へのまとめ方などが赤裸々に語られる。その思考方法、そして、そこからアウトプットされた簡潔かつ主張が凝縮された解答には、感動すらおぼえる。
あんな文章が書けるようになりたい。
一方、短答対策は、「過去問をくり返しくり返し解く」ことが強調される。「これをやらないと、うからない」とまで言われる*5。なので、インプット講義はほとんどない。一応「4A 条解講義(以下、条解)」があるが、インプット目的ではない(初学者である自分は、全くついていけなかったw)。
条解と論パタで使う「4A 条解テキスト」は、逐条形式になっていて、すばらしくコンパクト。六法代わりに、大変お世話になっている。
本当に、オンリーワンすぎる講義。もしかしたら、ナンバーワンなのかもしれない。
中村先生に興味がある方は、先生のブログ「勝利のアルゴリズム」を読むとよいと思う。色んな意味で、刺激的。ためしに、次のエントリを、読んでみてほしい。
http://ameblo.jp/4-algo-rhythm/entry-12162859600.html
『あなたは、答案例・判例等のフレーズや論証等の記憶・理解といった剣・鎧を身につけて、一気に強くなろうとしてはいないだろうか?』> 「うっ」て感じ。
なお、TAC 動画チャンネルにも、動画がたくさんあるので、参考になると思う。

アガルートアカデミー: 工藤 北斗 先生「総合講義 300(民法など)」

価格は低い。工藤先生書き下ろしの「オリジナルテキスト」を用いる。で、このテキストがすごい。試験に出題された内容が、きっちり整理され、体系的にまとめられている。少なくとも、自分には、そう見える。少し難易度が高いような(他では聞かない)内容も入っているが、むしろ、理解が促進される。フルカラーで、デザインも素晴らしい(コレ大事)。十分な余白もあり、とても見やすい(コレも大事)。なのに、分厚くない。柴田先生ほど「ざっくり」ではなく、伊藤塾ほど「がっつり」でもない。
なので、圧倒的に「効率よく」復習できる。
ちなみに、ホームページで説明されているように、講義は 3 周する。1 〜 2 回転目がメインで、論理的に、かつ正確な理解につながるよう工夫されている。例えば、「論点」であっても、前提知識なしで理解できるものは 1 周目でも扱うし、さして難しくない「論点」でも、正確に理解してもらうために(だと思うが)、2 周目にまわすものもある。「講義がわかりにくい」のような評判が散見されたが、ど素人の自分でも、全くそのようには感じなかった。
品質向上に、徹底してこだわる姿勢、これだけでも、十分よい刺激になった。
工藤先生に興味がある方は、先生のブログ「工藤北斗の業務日誌」を読むとよいと思う。

伊藤塾: 伊関 祐 先生「基礎マスター(行政法)」

価格は高い。悠々とした講義。しゃれじゃなくって。
とてもわかりやすい。入門講義テキストを熟知しており、あたかも伊関先生が書き下ろしたかのように講義をする。見習いたい。

伊藤塾: 呉 明植 先生「基礎マスター(憲法, 民法)/ 商訴集中講義(会社法, 民訴)」

価格は高い。「シケタイ」と「Go シリーズ」を用いて*6、大事な箇所をマークしながら、その部分を解説するスタイル。マークは、通常のマークに加え、定義、問題提起、トピック、場合分け、反対意見など、マーカーの色を変えながら、テキストを緻密に加工していく。テキストへの書き込みの指示もある*7。なので、「圧倒的に」復習しやすい。
ちなみに、個人的には、大事なところをマークさせる講義スタイルは、あまり好きではない。それは、(1) テキストを読み上げて、重要な箇所をマークさせただけで、満足してしまっているだろう先生を、何人か知っているから、(2) 受講者は、マークをすると、わかったような気になってしまうから。
しかし、ここまで徹底されると、これはこれで、悪くない。逆に、受講することが楽しくなる。実際、自分の場合でも、例えば技術書を丁寧に読み込まなければならないときには、場合分けや、トピックなど、マーカーを使い分けるようになった。ここまでが、講義スタイルの話。
呉先生の真骨頂は、2 つあると思う。真骨頂なのに 2 つ、まぁいいか。1 つは、流暢な語り口。もう 1 つは、丁寧でわかりやすい説明。書いてしまうと、チープに聞こえるなぁ。前者は、並み居る有名講師陣の中でも、頭一つ抜けている。正直、驚きだった。自分の下手くそさを反省した。後者は、パワポを駆使して、微塵の疑問も残らないほど、丁寧に丁寧に、そして論理的に説明がされる。コレこそが、呉先生の人気の秘密なのだろう。ただ、その分、講義時間は長い。自分が受講した基礎マスターは、憲法が全 60 時間、民法にいたっては、全 108 時間。受講するだけで、半年以上かかってしまった。。仕事をしながらでは、とてもムリだ。時間にゆとりができれば、会社法や刑事系科目も受講してみたいところ。
呉先生に興味がある方は、伊藤塾のホームページに加え、先生のブログ「伊藤塾講師 呉の語り得ること」も参考にするとよいと思う。ただ、あんまり更新されない。

伊藤塾: 本田 真吾 先生「憲民刑集中講義(憲法, 民法)」

価格は高い。それでも、伊藤塾の中では、低価格な方かな。憲民刑集中講義は、人気の講座らしい。集中講義なのに、重要な箇所はあまねく触れてやろうという、野心的な講義。その分、けっこう早口。まぁ、そりゃそうか。
マークとアンダーラインを使いわけ、テキストを加工していくスタイル。とにかく、イケメン。

資格スクエア: 吉野 勲 先生「基礎講義(憲法)」

価格はかなり低い。テキストは、かなり分厚い。大事なところをマークさせるスタイル。べったりマークすることが多い印象が残っている。ただ、個人的には、相性がよくないみたい。

辰巳法律研究所: 原 孝至 先生「基礎講座(民法)」

価格は普通。講義は、聞きやすいし、わかりやすい。板書があるが、字はきれいで、見やすい。ただ、板書の時間はムダだと思った。また、自分が受講したときには、テキストと、板書と、穴埋めになっている論文の答案みたいなレジュメの 3 種類の教材が、とっちらかってしまって、復習しにくかった。
原先生に興味がある方は、先生のブログ「原孝至の法学徒然草」を読むとよいと思う。

辰巳法律研究所: 西口 竜司 先生「新入門講座(刑訴), 基本書の手引き」

価格は普通。講義は、、聞いていられなかった。かなり相性が悪いようだ。もっとよく調べてから、購入を検討すべきだった。
西口先生に興味がある方は、先生のブログ「弁護士 西口竜司の熱血日誌」を読むとよいと思う。

行政書士試験対策

伊藤塾: 志水 晋介 先生「条文からおさえる民法徹底解説」

価格は低め。流暢な語り口。重要箇所をマーク。たんたんと講義が進む感じ。

東京法経学院: 寺本 康之 先生「最短合格講座(憲法, 行政法, 民法, 商法)」

価格は、極めて低い。コストパフォーマンスが最もよいと思われる講座。知っていたら、コレ一本でよかったのだと思う。なかなかたどり着けなかった。
とにかく、わかりやすい。自分にとっては、本エントリに挙げた講座の中で、最もわかりやすかった。「もしかしたら、ある程度、正確性を犠牲にしているのかもしれない」と思うくらい。それでも、初学者にとって、全体像がイメージでき、個々の条文、判例などが腹落ちすることは重要だと思っている。
仕事をしながらでも、3 ヵ月で、4 科目(+ 一般教養)を、一気に受講し切れた*8。しかも楽しく。できれば、もう 2 周くらい聞きたい。
あ、ファシリティー面は、あまりよろしくない。

リーダーズ総合研究所: 山田 斉明 先生「基本書フレームワーク民法)」

価格は普通。元、伊藤塾の超人気講師。講座名の通り、テキストとして基本書を使う。自分が受講したときは、大村先生の「民法 I 〜 III」(これとは別に、パワポも用意されている)だった。講座名に「フレームワーク」とあるのは、勉強の仕方や、思考の仕方を、体系的に教えてくれるからだと思う。これは意外だった。こういうニーズがあるのかと。たぶん、ビジネスマンであれば(?)、当然身についていなければならない(?)内容なのではないかと。資格試験対策の講義の中で、こういった何にでも応用がきく基本スキルを、かみ砕いて、実践的に教えてもらえるという点が、オンリーワンの講座になっている秘密なのだと思う。基本書の魅力を教えてくれた、目から鱗の講義だった。
山田先生に興味がある方は、先生のブログ「リーダーズ式 合格コーチ」を読むとよいと思う。


最後に

  • 中村先生と、工藤先生には、すごい「勢い」を感じる。指導方針は、真逆だけど。目線が高く、チャレンジし続ける姿に、心を打たれた。想いの強さが伝わってくる
  • 寺本先生の「わかりやすさ」は、どこから来るものなのか、いまだにわからない


あー、法律勉強してー。

*1:社会人歴 10 数年の SE。学生時代の専門は、物理。法律は門外漢。興味はあるが、たぶん苦手。

*2:そもそも素人だし、受験をしたわけでもないので、良し悪しは、よくわからない。

*3:予備試験、法科大学院の入学試験も。

*4:てか、普通、メモはとるでしょ。

*5:確かに、これは、そうだろうなぁと思う。自分も、大抵の資格試験は、過去問から入るのが最も効率的だと思っている(中小企業診断士情報処理技術者試験にいたっては、過去問が命)。

*6:完全マスターの会社法だけ、リークエ。

*7:さすがに「指示されなくても、テキストに書き込むだろう」と思うが、そうでない人がいるのだろう。

*8:ほとんどが「行政法」と「民法」だけど。